キャンパス?ハラスメントコラム 2021年度
自然環境や地球環境を守り、その持続可能性に配慮することは、今や社会の常識となっています。特にSDGsの概念が広く社会に普及するようになってからは、企業や大学等、多くの組織が、いかに自分たちが環境に優しい組織であるかを積極的にアピールするようにもなりました。
他方で、ハラスメントやいじめ等、人々の心身の健康を蝕む社会的公害(social pollution)に対しては、社会的認知は広がりつつあるものの、具体的な取り組みが進んでいるとは言えないのが現状です。セクハラ、パワハラ、アカハラ、モラハラ等、すべてのハラスメントは、悪意の有無に関わらず、受ける側に対する人権侵害行為です。
ハラスメントをなくすためには、まず個々人が、自分自身の言動に対して相手がどのように考え、感じるのかを想像することが大切です。しかしながら、個々人の良心に期待するだけでは、この社会問題は解決できません。自然を破壊する公害と同じように、人間の心身を蝕む社会的公害に対しても、社会や組織全体の問題として取り組まないかぎり根絶することはできません。
本学は皆さんの安全と健康をなによりも優先し、キャンパス?ハラスメント対策室を中心に、ハラスメントの防止と解決に取り組んでいます。ハラスメント問題で悩んでいる方は、まずは対策室に相談にいらしてください。あなたがあなたらしくキャンパス?ライフを送れるように全力でサポートいたします。
( キャンパス?ハラスメント対策室員 山田 耕嗣 )
■「No means No」(ニュース専修2022年1月号掲載)
1カ月ほど前、4歳の息子が私にこう言った。「〇〇君が、“やめて”は“やって”ということだよ、って言っていたよ」。
〇〇君は、息子が慕っている同じクラスの年長の男子である。私は、「“やめて”って人が言った時は、“やめてほしい”という意味だよ。嫌なことされたら“やめて”と言うでしょ。それでやめてくれなかったら、どう思う? 嫌じゃない?」と問いかけた。息子はしばらく「だって、〇〇君が言っていたもん!」と理解を示さない。
日本で「嫌よ嫌よも好きのうち」という表現がある。これは、嫌だとは言っているものの実際には好意がないわけでないという意味で、主に女性が男性から誘われた時の心理を示すものと一般的には解釈されている。英語では、No means Yesである。
女性がNoと発しても、Yesと理解するのが妥当だと言えるのだろうか? そもそもNoと言われているのに、相手のYesという意思をどのように確認するのだろうか? ここには、相手の意思に耳を傾けて、相手を尊重する姿勢が決定的に欠けている。近年、先進諸国では、性行為の際に当事者間の合意の有無に着目し、拒否の意思が示された場合の性行為は性犯罪とする法律の改正や解釈が進んでいる。
息子は、先日、「やっぱり“やめて”は“やめて”かなぁ~」とつぶやくように言っていた。No means Noであることを理解し、相手の意思を尊重するような人間になってもらいたいと改めて思っている。
( キャンパス?ハラスメント対策室員 杉橋 やよい )
■悪意不在の「ハラスメント」(ニュース専修2021年11月号掲載)
キャンパス?ハラスメント対策室員になって1年半が過ぎました。室員になる前は、「ハラスメント?パワハラ、セクハラ、アカハラといろいろあるけれど、いじめや嫌がらせなど悪意に満ちた卑劣な行為のことですよね」というような非常に浅い知識しかありませんでした。でも、「ハラスメント」についていろいろ知っていくうちに、事はそれほど単純ではないことが分かってきました。
問題となる行動をする側に悪意があるとは限らないのです。無意識のうちに、あるいはこれは世間の常識だからという思い込みによって取った言動が「ハラスメント」の申し立てを受ける、というケースが決して少なくありません。この場合、問題行動の当事者に悪意はないので、相手側から被害を訴えられても、それは過剰反応にすぎないと反発します。
しかし、悪意がなければ何を言っても、しても良いのでしょうか。「ハラスメント」は人と人がかかわる中で生じます。人と接する時に、自分の言動がその人を傷つけ苦しめないか、悩ませないかと意識すること、要は相手の気持ちや立場をおもんばかることが「ハラスメント」をなくす一歩となり得るように思います。
現在コロナ禍の下で問題になっているワクチン?ハラスメントも、接種が強制でないことを忘れず、接種しないことを選択した人たちの事情や意思を尊重することが大事ではないでしょうか。
( キャンパス?ハラスメント対策室員 杉本 肇美 )
■一人一人が自分らしくあるために(ニュース専修2021年9月号掲載)
最近、〇〇ハラスメントという言葉を聞くことが増えています。ハラスメントとは、簡単に言えば、“人を困らせる行為”ということですので、もし、このような言葉にあふれる状況があるとすると、明らかに好ましくないと言えます。
多様な社会に暮らす現代の人々が、自分らしく生きるために、お互いに気をつけなければいけないことは何かと、広く捉え考え始めたことが、急激にこの言葉が広がってきた本質ではないでしょうか。
これに伴い、一昔前には声をあげづらかったことが、昨今では問題視されるなど、ハラスメントの境界線は、時代に沿って変化を見せています。
そんな中で、私たち自身は、“ハラスメント”を正しく認識できているでしょうか。
難しいのは、この境界線が一人一人異なり、誰もが被害者?加害者になりえることです。だからこそ、お互いに関心を持ち、個々のケースをみんなで考え、感じ方の違い、問題意識を共有する事がより良いキャンパスライフを送るために、非常に重要なのではないでしょうか。
キャンパス?ハラスメント対策室は、リーフレットの配布や、ワークショップの開催、教職員への研修実施など、さまざまな啓蒙活動を行っています。この活動をきっかけに、“ハラスメントはあってはならない”という認識が皆さんとの共通認識となるよう、また、常に変わり続ける現状を理解していただくことで、一人一人が自分らしいキャンパスライフを送れる環境を実現したいと考えています。
(キャンパス?ハラスメント対策室員 小山 祐美 )
■まずは声に出していってみる(ニュース専修2021年7月号掲載)
自分の心の健康を考慮して、テニスの四大大会、全仏オープンから大坂なおみ選手が棄権する、と発表し世界的な注目を集めたのは記憶に新しいことと思います。パワフルで粘り強い大坂選手のプレーを見られなかったことは大変残念でしたが、彼女の発言と行動のおかげで、アスリートの心の健康という問題が広く認識されることになりました。最初は大坂選手自身も、このような展開になるとは予想していなかったかもしれませんが、無理を強いられている、心の健康が保てない、と強く感じたことを声にしたことが、同じ立場の人の共感や見守る人々の支持を得たといえるでしょう。
キャンパス?ハラスメント、アカデミック?ハラスメントといわれる問題も認識されるようになったのはここ20年くらいで、それまでは大学においてよくある人間関係の悪化とかいやがらせなどとして、たいていは、被害を受けた人が声を上げる場もなく、そのため被害を与えた人も相手につらい思いをさせたという自覚に欠けていたのが実情です。
大学は、学生、教員、職員、保護者、また業者の方など多くの人が交わる場です。立場が異なれば、正当な扱いを受けていないと感じる観点も異なります。そのように感じたらまずは声を上げること、言葉にしてみることが大切です。自分の中にしまって我慢するだけでは周囲はあなたの問題を理解しないままですし、あなたにそのような思いをさせた本人も気がついていないかもしれません。あなたの問題を皆で共有するところから解決の糸口は見つかります。キャンパス?ハラスメント対策室もあなたの問題を一緒に考えてゆきますので、ぜひ、感じたことを話しに来てください。
(キャンパス?ハラスメント対策室員 池尾 玲子)
■ひとりで悩まずハラスメント対策室へ(ニュース専修2021年5月号掲載)
大学で学生および教職員の皆さんが、大いに勉学に励み、それぞれの職域で研究?教育?労働に専念することは貴重な権利ですから、良好な勉学?研究?教育および労働環境が保持されなければなりません。
しかし、たいへん残念なことに、キャンパス?ハラスメントは後を絶ちません。
ハラスメントは、職務上の地位や人間関係を背景に、相手側の意に反する不適切な発言や行為等(言動)を行うことによって、相手方の人格や尊厳を大きく損なう人権侵害行為であり、良好な勉学環境、研究?教育環境、そして労働環境を悪化させます。
このようなことがあっては、「学問と教育の府」である大学の社会的役割と使命は果たせないことになりますし、個人の尊厳と人権を守ることはできません。
本学では、「専修大学キャンパス?ハラスメント防止規程」を制定し、キャンパス?ハラスメントの防止と解決に向けて「キャンパス?ハラスメント対策室」(対策室)が置かれています。
不幸にして、皆さんがハラスメント被害を受けてしまい、勉学、研究?教育や仕事が手につかないような状況に立ち至ったときには、まずは対策室にご相談ください。担当の相談員が親身になって一緒に問題の解決方法を探ります。
対策室は、学内のどの機関からも独立しており、公正?中立な立場から問題を取り扱いますし、対策室員には厳しい守秘義務が課されていますから、個人情報は厳重に保護されます。
ハラスメントは人権侵害です。ひとりで悩むことなく、ぜひとも対策室にご相談ください。
(キャンパス?ハラスメント対策室長 内藤 光博)