専修人の本_2024年度

2024年度 新刊紹介

専修人の本?武田徹著
神と人と言葉と 評伝?立花隆
発売日 2024.6.7
著 者 武田 徹
発 行 中央公論新社
価 格 税込2,750円
現職首相を辞任に追い込んだ『田中角栄研究』を発表し、一躍時代の寵児となった立花隆。そんな立花がキリスト教信仰と詩を捨てていたことに筆者は注目する。
学士入学した二度目の東大時代に出会い、強い影響を受けたと立花がしばしば語っている、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の末尾には「語り得ないものについては沈黙しなければならない」と自制を促す言葉がある。両親に教えられた信仰と大学時代に創作に夢中になった詩は、いずれも「語り得ない」領域に触れている。だから、それらを語らずに封印した。その禁欲が彼を、事実と論理に徹底的にこだわり、曖昧さを排した文体を駆使する稀代のジャーナリストたらしめたのではなかったか。そうした仮設の下、「知の巨人」の人生を読み解こうと試みた一冊である。
著者(たけだ?とおる)文学部教授。メディア社会学。
専修人の本?田中隆之教授著
アメリカ連邦準備制度(FRS)の金融政策〈第2版〉
発売日 2024.4.23
著 者 田中 隆之
発 行 金融財政事情研究会
価 格 税込3,080円
アメリカの金融政策は、昨今の超円安とその修正の動きを左右するなど、日本経済への影響も大きい。
本書は、米連邦準備制度(FRS)の金融政策を理解し評価するために必要な情報を整理し解説したものだが、初版発行から10年が経過した。この間、経済情勢が大きく変動する中で、その政策も緩和と引き締めを繰り返し、政策の枠組み自体が大きく転換しつつある。
この第2版では、2014年以降の実体経済と政策の展開を補い、政策の評価を行った。とりわけ、20年のコロナ危機への政策対応を、08年の世界金融危機時と比較しつつ、その評価を試みる一方で、「新常態」としてのポスト?非伝統的金融政策の実態と課題を明らかにしている。最終章では、現代の中央銀行が抱える諸問題を整理、指摘している。
著者(たなか?たかゆき)経済学部教授。金融政策、日本経済論。
専修人の本?足代訓史教授著
1からのアントレプレナーシップ〈第2版〉
発売日 2024.3.23
共 著 足代 訓史
発 行 碩学舎
価 格 税込2,970円
近年、経済や社会にイノベーションをもたらすものとして「アントレプレナーシップ」というキーワードが着目されている。この言葉は、起業家精神(行動)と訳されることもあり、ゼロからの「企業」だけに関連したものと思われがちであるが、実は、企業の新規事業開発や同族企業の事業承継などとも密接に関わる重要なものである。
本書は、15人の研究者による著作であり、アントレプレナーシップとは何か、また、アントレプレナーとはいかなる行動特性を有する人であるのかなど、これからの社会のキーワードを体系的に学ぶことができるものである。共著者の一人である足代は第10章を担当し、ツイッター(現X)を例に、スタートアップ期の起業家活動について解説している。
著者(あじろ?さとし)経営学部教授。経営学(事業創造論、アントレプレナーシップ論)。
専修人の本?飯孝行教授著
ディスカッション法と社会
発売日 2024.4.9
編 著 飯 考行
発 行 八千代出版
価 格 税込2,970円
法学入門書は数多く、そのほとんどは条文から法を説く。それに対して本書は、社会から法を説く法社会学のアプローチをとる点に特徴がある。
人生と法の関わり、社会生活と法、法の担い手?法の創造の三つのパートで、子ども、教育、事故と災害、高齢者、まちづくり、農業?漁業、沖縄、動物の権利、裁判を通じた法の形成や、市民の司法参加などの24のテーマを取り上げている。
各章は、概説、論点、事例とディスカッションからなる。実例や判決に基づいて、法と社会への関心を読者が深めることに留意されている。
執筆者は、法律科目の授業を担当する大学教員である。専攻するテーマを、教育者として分かりやすく記している。この一風変わった法学?法社会学の入門書を読み、ゼミナールなどで議論することで、法を自分ごととしてとらえ直すことにつながるであろう。
著者(いい?たかゆき)法学部教授。法社会学。
専修人の本?佐藤慶一教授著
災害対応と近現代史の交錯―デジタルアーカイブと質的データ分析の活用―
発売日 2024.4.3
著 者 佐藤 慶一
発 行 共立出版
価 格 税込3,960円
本書は、著者がハーバード大学ライシャワー日本研究所で在外研究した成果をまとめたものである。第Ⅰ部「災害対応を通じて社会状況?構造をながめる」では、中世ペスト、ロンドン大火、リスボン地震、関東大震災、太平洋戦争、東日本大震災?福島原発事故といった巨大災害を扱い、前後の社会状況?構造との関係性を探索した。第Ⅱ部「質的データ分析による探索」では、ネット検索、日米の新聞記事、専門家へのインタビュー、思想や映画との関連から、東日本大震災の社会的影響や災害の社会的意味づけについて考察を重ねた。
多くの学生や社会人の方々に手に取っていただき、災害や危機を通じた人間や社会の変化?移行について考えるきっかけとなることを願っている。
著者(さとう?けいいち)ネットワーク情報学部教授。情報学。
専修人の本?田中隆之教授著
金融政策の大転換―中央銀行の模索と課題
発売日 2023.11.11
著 者 田中 隆之
発 行 慶應義塾大学出版会
価 格 税込5,940円
去る3月、日銀が17年ぶりに利上げを行い、長短金利操作と呼ばれる緩和政策も解除した。一方、米欧の中央銀行は、40年ぶりと言われるインフレを抑えるための急激な金融引き締めを終え、利下げに転じようという局面にある。
本書は、こうした目先の展開を理解するためにも、まずはここ30~40年の金融政策の枠組みの転換に注目し、その整理、分析を提示している。特に、いわゆる非伝統的金融政策を分類してそのメカニズムを明らかにし、日銀だけでなく、2008年の世界金融危機後にこれを実施したFRB(米国)、BOE(英国)、ECB(ユーロ圏)の政策をも幅広く分析した。
さらに、現代の中央銀行が抱える課題として、低金利下での物価コントロールや資産価格バブルの問題、財政ファイナンスの問題にも斬り込んでいる。
著者(たなか?たかゆき)経済学部教授。金融政策、日本経済論。
新しい本02大塚明子講師
インタビュー大全 相手の心を開くための14章
発売日 2024.2.12
著 者 大塚 明子
発 行 田畑書店
価 格 税込2,200円
雑誌やWebの記事などさまざまなメディアで筆者が行ってきたインタビューから得たデータを学術的に分析、「人から自然に話を引き出す」ために必須なストラテジーを体系化した。
中途終了型発話や相づち、スピーチレベルのシフトダウンといったポライトネスの観点から、あるいは共感的理解、自己開示など心理学に関する観点から、インタビュアーの言語行為やふるまいを観察?分析し、相手が能動的に話すよう導くストラテジーをわかりやすく解説している。インタビューのみならずビジネスシーンでのヒアリングや日常のコミュニケーション力の向上にも役立つ内容である。
会話コミュニケーションのテキストとしても使えるよう”練習問題”を各章に設けたほか、コラム「インタビュー裏話」も添えて、インタビューにまつわる理論と実践と学習を集約した1冊となっている。
著者(おおつか?めいこ)国際コミュニケーション学部兼任講師。言語学。
新しい本01遠山浩教授
中堅?中小企業のイノベーション創出と産業集積地の将来
発売日 2024.1.31
著 者 遠山 浩
発 行 専修大学出版局
価 格 税込3,740円
本書は中小?中堅企業のイノベーション創出が日本の経済成長を支えてきたと捉え、日本復活の鍵はその機能の回復にあること、そのためには都市部の産業集積が地方や東アジアに広域する下で達成されると説いている。地方の集積地は選ばれるためには工業団地をカーボンニュートラルにする等の対応が必要となる。
第1章でイノベーションの担い手である中堅企業を考察し、第2章以下で各地の事例研究を行っている。第2章でイノベーションの核となりうる都市部の川崎市を紹介し、第3章で広域化の対象として、東アジアの中国深圳市を紹介し、第4章で日本の地方都市として、静岡県富士市と福島県いわき市を紹介している。日本の地方都市は東アジアの国々がライバルとなる。第5章以下で都市型産業集積の広域化が進んでいくためには、産業集積に応じた金融が求められること、および社会企業家の可能性について述べている。
著者(とうやま?こう)経済学部教授。中堅企業論。