“税法の専修”と称され、税理士をはじめとする税務の専門家を多数輩出してきた専修大学大学院。経済学、法学、経営学、商学の4研究科で税法を学ぶことができ、税理士試験の科目免除制度※にも対応しています。高度な専門性と実務能力を備えた人材を育む教育?研究について、税理士を志望する学生を指導する各研究科の教員に聞きました。
——各研究科における、税法に関する教育?研究の特色を教えてください。
中野:経済学研究科では、神田キャンパスで平日夜間?土曜に開講している「プロフェッショナルコース」で税法関連科目を学ぶことができます。「税は経済社会を支えるインフラ」「税はそれを映す鏡」と言われるように、税は経済社会の基盤であり、その変化に応じて形を変えていくものです。本研究科では、財政学や租税政策を通して税法への理解を深めながら、「年収の壁」や税の公平性?中立性といった話題のイシューについても掘り下げて議論していきます。
増田:同じく神田キャンパスにある法学研究科は、院生の大半が税理士志望で、税法の解釈や判例研究を中心に学びます。しかし税法はさまざまな分野と密接に関わっているため、会計学や経営学の知識、あるいは政策的な議論が欠かせません。その点、本大学院は他の3研究科にも税法関連分野の教育?研究や文献の蓄積があり、研究科の垣根を越えた科目の相互履修も可能です。法解釈にとどまらず、幅広い視野と問題意識を持つことができる環境が最大の特色だと考えています。
大柳:経営学研究科は唯一生田キャンパスを拠点にしていることもあり、社会人より学部卒業生が多いのが特徴で、経営学の各分野と並行して基礎から税法を学びます。経営と税は切っても切り離せない関係にあり、特に多くの企業が海外進出する中で、国際税務の重要性は一層高まっています。また近年は企業において、利益を最大化するための適切かつ合理的な税務戦略も重視されるようになりました。税理士はもちろん、税の専門家としてこうした戦略を担える人材の育成も目指しています。
国田:神田キャンパスに拠点を置く商学研究科では、会計学専攻の「アカデミックコース」(平日昼間開講)と「プロフェッショナルコース」(平日夜間?土曜開講)で税法の科目を設置しています。税理士として働くには会計学の知識が不可欠であり、昨今大きく変化する会計のルールを正しく把握しなければなりません。そうした最新の知識を得るために、税法を学びながら、会計学をはじめ他の隣接科目を履修する院生が多いように思います。
——専修大学大学院が“税法に強い”と言われる理由は何でしょうか。
増田:そもそも専修大学は東京大学、京都大学に次いで私立で最初に税法の講座が開設された大学であり、約70年に及ぶ教育?研究の歴史があります。さらに先程も触れたように、4研究科が知見を共有し合い、有機的に連携できる環境は大きな強みだと感じます。それは院生同士も同じで、活発に意見交換や情報交換を行っていますね。また、税理士試験の科目免除を受けるには必要単位の取得に加え、修士論文が国税審議会で認定される必要がありますが、ここでも「専修大学大学院の修士論文が水準になる」と言われるほど確かな実績を残しています。
中野:それを可能にしているのは、各研究科のきめ細やかな論文執筆指導です。4研究科とも複数の教員が一人の指導にあたる複数指導体制をとっており、段階的な中間発表の機会も設けています。例えば経済学研究科では、指導教員のほか他分野の教員も参加する研究発表を年3回実施し、多角的な視点を取り入れながら論文の質を高めています。
大柳:そうした実績が評価されてか、ある専門学校の関係者に「科目免除を目的に大学院を選ぶなら、専修は第一選択になる」と言われたこともありました。また、学部からの進学者が多い経営学研究科に関しては、「2年間勉強に集中して科目免除に必要な試験科目に合格し、最短で税理士を目指す」ルートが確立されつつあります。20代で税理士になるのは難しいとされる中で、多くの院生がその難関をクリアし、次のステップへと進んでいます。
国田:一方、働きながら税理士を目指す社会人の方も多数おられます。神田キャンパスは立地が良く、特に経済学研究科?商学研究科は平日夜間?土曜に開講しているため、社会人が通いやすい条件が整っています。実務に携わっている方はリアルな問題意識があり、やりたいことが明確です。商学研究科にいながら「データを扱いたい」「法律が好き」という人もいれば、「マネジメントを学びたい」という人もいます。選択の幅が広く、自分の関心をとことん追求できるという意味でも、4研究科の距離が近いメリットは大きいでしょう。
——専修大学大学院で税法を学ぶことで身に付く力とは。また、社会でどのような活躍が期待できるでしょうか。
増田:社会人の院生が一様に言うのは、「今まで受からなかった税法科目が受かるようになった」ということです。それは、体系的に学ぶことで理解が深まり、勉強の効率も上がるからでしょう。たとえ暗記で試験に合格しても、クライアントに対して専門家として説明責任を果たしていくことはできません。実務で問われるのは論理的思考力や問題解決力であり、それこそが大学院で養われるものだと考えています。
中野:おっしゃる通りだと思います。例えば我々経済学研究科に関して言うと、「なぜ政策的にこうした法律ができたのか」まで考えないと、税法の本質を捉えることはできません。さまざまなデータ分析も手掛かりに法律の意義を理解することで、説明責任を果たす力が養われ、将来的な活躍の土台を築けるように思います。
国田:専門家としての責任を全うするには、時代とともに変化する法や制度とその背景をきちんと咀嚼し、理解することも求められます。各研究科で体系的に学ぶことで、こうした力も鍛えられるのではないでしょうか。また、隣接科目も含めて学びの選択肢が広い分、院生たちは単に科目免除を目指すだけではなく、「税理士になった後にどうしたいか」を意識しながら学んでいるように感じます。
大柳:「受かる」ことがゴールではなく、大事なのはその先ですからね。どの専門分野を軸に仕事をしていくのか、実務で求められるどんなスキルを磨いていくのか。それを探し、見つけ、深めていくことは非常に有意義だと思います。一方で、本研究科の院生は税理士志望者以外にも、「自分の現在地を俯瞰して次のステージに進みたい」という社会人の方もいれば、会計システムの開発会社や上場企業の経理部門などの一般企業に就職する人もいて、多様な分野で修了生が社会で幅広く活躍しています。
——受験を検討している人へメッセージをお願いします。
中野:これまで経済学を専攻していない人は、経済学研究科に入るのはハードルが高いと感じるかもしれません。ですが、基礎から学び政策的議論を深める中で、問題意識が明確化し、伸びていく人をたくさん見てきました。ぜひためらわず、新たな一歩を踏み出してください。
増田:今は税理士も大手会計事務所に勤めたり、海外に拠点を置いて活躍したりとさまざまな道がありますが、専門的な議論や論評ができる人はどこに行っても重宝されます。税法を多様な側面から探究したい人は、法学研究科で共に学びましょう。
大柳:さまざまな院生と接してきて感じるのは、いつからスタートしても、意欲と覚悟があれば目標を実現できるということです。「過去どうだったか」よりも、「これからどうしていきたいか」を真剣に考えている方をお待ちしています。
国田:社会人の方は仕事を辞めて大学院に行くのか、続けながら行くのか、人生における一つの大きな選択になります。ここにはその思いに応える環境がありますので、ぜひ新たな世界に飛び込み、次のステップに挑戦していただきたいと思います。
?注記?:※税理士登録には税法3科目?会計学2科目の計5科目に合格する必要があるが、大学院において所定の単位を取得した上で、修士論文を国税審議会に提出することにより、税法2科目または会計学1科目の試験免除を受けることができる。