法学研究科法学専攻修士課程修了(法学研究科公法学専攻博士後期課程在籍中)
杉山 千春(旧姓:杉崎)
専修大学法学部法律学科卒業後、法学研究科へ進学。学部生のころから現在の指導教官である飯 考行先生の下で学ぶ。修士課程を修了し、現在博士後期課程在籍中。
——学部生のころから法社会学に興味をお持ちだったと伺っています。どのような理由で専門的に学び始め、大学院まで進学されたのでしょうか。
法社会学に興味を惹かれた理由は、法を社会現象のひとつとして捉えるところにあります。例えば、企業の事故で被害者となった方や、東日本大震災で亡くなられた方のご遺族が、どういう経緯で訴訟を起こしたかなどを調査?研究します。もちろん、法律の条文に着目し、それが判例にどう結びついたのかを解明する法解釈学などの分野も大切な学びなのですが、法制度を世の中との関わりから考察する領域に最も面白さを感じたのです。大学3?4年次では飯 考行先生の法社会学ゼミに入室。一般的な法学の授業では扱わない漁業権などが取り上げられ、法を通じて社会について考える学生が集まっていたので、自分の興味関心を受け入れてくれるという安心感があり入室を決めました。以来、知的好奇心の赴くまま研究に邁進したいと考え、博士課程まで進みました。
——具体的な研究内容についてお聞かせください。また、どのような視点を持って研究に取り組んでいらっしゃいますか。
大きなテーマは「裁判員制度を通じた市民の司法参加」です。「裁判員にふさわしい人物とは」という点に着目し、裁判員裁判を経験された弁護士の方々への聞き取りを中心に研究を進めています。「ふさわしい」という観点だけでも、誰にとってふさわしいのかという点から考察する必要がありました。ゆえに、裁判員を選任するときに対象となる市民を一部抽選から外すことができる「不選任請求」を修士論文のテーマとしました。この選考過程は非公開のため、裁判員制度の中でもブラックボックスの部分です。その現状に少しでも光を当てたいと思い、始めた研究です。また、裁判員制度自体が当時は新制度だったので、選任手続や不選任請求について参考となる先行研究があまり多くはありませんでした。たくさんの弁護士の方にお話を伺う中で、若輩者の私にも「こういう社会的調査があると我々も得るものがあるから頑張ってほしい」とお声掛けいただくことがあり、研究を社会にどう還元していくかを意識するようになりました。私の研究成果が、司法に関して適切な議論が行われる一助となれれば、こんなにうれしいことはありません。
——大学院での学びを通して、どのように成長できたと感じていらっしゃいますか。
興味関心の赴くまま研究に没頭してきましたが、自分の研究結果を社会に活かすというところにはまだ至れておらず、苦労しています。少しずつでも研究をアップデートしていけたらと日々奮闘中です。ひたむきに努力する大切さ、困難に負けず必死に研究に食らいついていく姿勢などが養われました。また、修士課程在籍中から参加している国際学会は、研究活動において大きなモチベーションとなっています。英語の原稿やスライドを準備し、多くの方の前で研究成果を発表するのはハードルが高く、非常に緊張します。しかし、そこで出会ったアカデミアの方々から新たな刺激を受け、「より意義のある研究にしたい」と向上心も高まりました。
——今後の展望について教えてください。
裁判員制度に関しては、法曹と一般市民による協働が趣旨としてあるにもかかわらず、いまだ広く認知されていないことが問題だと考えています。研究を通じて市民の司法に対する理解を促進し、司法に市民の意識?声を反映させること。これが私の研究の原点であり、貫いていきたい指針です。また、今後は裁判員制度だけでなく、少し視野を広げて事件報道に関するテーマにも取り組んでいきたいと考えています。まだまだ研究への熱意は尽きることがありません。