専修大学国際コミュニケーション学部日本語学科

専大日語?コラム

専大日語の教員による、月替わりのコラムです。

2024年6月:阿部ゼミ「やさしい日本語」プロジェクト

2023年1月のコラムで、私が担当する専門科目「日本語の社会的研究2」において、「やさしい日本語」にするための知識等を学習したうえで、既存の防災資料を「やさしい日本語」に書き換えていくという活動を展開していることを述べました。

今回は、ゼミでのプロジェクトを紹介したいと思います。

HTGd。プロジェクト

2022年度?2023年度の2年間をかけて、「やさしい日本語」を使って防災を学ぶボードゲームを作成しました。①災害を想定して、物資カード(救護ベッドや備蓄物など)をボードに置いていき避難所を設営する避難所作成パート、②避難所が上手く設営できたかどうかを確かめる避難所運営?評価パートからなる、「HTGd。」というゲームです。

「HTGd。」

  • キャッチコピー:みんなに やさしい ボードゲームです。
  • コンセプト:「やさしい日本語」×防災×ゲームで、誰でも防災を楽しく学ぶことができるゲーム。
  • ターゲット:日本語が少しでもわかる人?防災について学びたい人。防災について学習の機会の多い教育現場。
  • プレイ想定人数:2人から6人(1グループ)

マニュアル等のゲーム内の文言?文章は、すべて「やさしい日本語」で書かれています。また、フォントは、ロービジョン(弱視)、ディスレクシア(読み書き障害)に配慮した、ユニバーサルデザインの「UD教科書体」を使用しています。

国?地域?文化によって、防災の知識、防災への意識も異なります。日本の防災知識?意識は、日本では常識となっているものも多いですが、それが世界で通用するわけではありません。したがって、日本に滞在する外国人は、日本の防災知識?意識を知らない人も多いのです。

簡単な日本語で説明されたルールに則って、日本の防災を学んでもらい、日本の減災を目指すという大きな目標を掲げています。

成果の提供

このゲームの作成過程において、大きな副産物もありました。ゲーム内ではピクトグラムを使用するのですが、既存のピクトグラムでは不十分なのです。そこで、プロジェクト?チーム自らで、必要なピクトグラムを作成しました(完成したピクトグラムの一部を掲載します)。

一度作成したピクトグラムについて、プロジェクト?チームが意図したピクトグラムの意味が理解できるかどうかを確認するために、Webアンケート調査を実施しました。その結果や回答者からのコメントを踏まえ、ピクトグラムの改訂を行い、完成させました。このピクトグラムの画像は、プロジェクトのホームページを作成し、フリー素材として提供する予定です。

新たなスタート

さて、2024年度は、HTGd。を参考にしながら、アレンジを加えた新たなボードゲームの作成を開始しました。 日本語を母語としない人の日本語レベルに合わせ、ゲームの難易度も調整した複数のボードゲームです。今年度中に、その一部の完成を目指しています。

2023年1月のコラムでも述べましたが、この災害の多い日本という国において、すべての人が十分な災害情報を受けとることのできる社会を目指して、日本語学を学んだ私たちに「何ができるのか、何をすべきか、何をしなければいけないのか」を問い続けていきます。

阿部貴人

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