専大日語?コラム
専大日語の教員による、月替わりのコラムです。
2022年5月:外国人のための日本語学習番組を見てみませんか
皆さんは、テレビ番組の外国語講座を見て、外国語を学んだことがありますか。
その言語のネイティブスピーカーが演じる短いドラマを通して会話の表現や文法を学んだり、その国の自然や文化を紹介する映像を見たりして、気軽に楽しく学べますね。 同じように、外国語として日本語を学ぶ人たちのためにも、番組が作られているのを知っていますか。
今回のコラムでは、日本で働きたい、生活したい人を主なターゲットとして、新しく作られた日本語学習番組「ひきだすにほんご Activate Your Japanese!」を取り上げます。 国際交流基金とNHKエデュケーショナルによって共同制作された番組は、NHKの海外向け放送(NHKワールド)を通じて各地で放映されています。全24回分はオンデマンド配信されていて日本でもいつでも見ることができます。日本語教育に興味がある人や日本に来ている外国人ってどんな人たちだろうと思っている人にとっても、見どころとなる点とともにご紹介しましょう。
1回15分の番組は以下の3つのコーナーで構成されています。
1.「スアン日本へ行く!/ Xuan Tackles Japan!」
アニメが好きで日本に来てホテルで働き始めたベトナム人のスアンのドラマです。
スアンは、毎日の仕事や生活の中でさまざまなコミュニケーション上の困難に出会います。「会話がうまく続けられない」「相手の言ったことが聞き取れない」そんなとき、発想を変え、自分が知っている日本語を使って困難な場面を乗り越えていきます。
このような外国語での課題解決の方法は「ストラテジー」と呼ばれています。最近の日本語(外国語)教育では、コミュニケーション能力を伸ばすためには、会話の表現や文法の知識を増やすだけでなく、実際の場面でストラテジーを積極的に使うことも必要だと考えられています。
2.「気持ちが伝わるオノマトペ / ONOMATOPOEIA ―Share Feelings―」
「どきどき」や「すっきり」などのオノマトペは、簡単に気持ちや状況を表現できてとても便利なことばです。このコーナーでは、それぞれのオノマトペが表すイメージを音楽やアニメーション、会話を通してわかりやすく紹介しています。
オノマトペは、残念ながら初級の教科書ではあまり取り上げられていませんが、アニメやマンガを通して日本語に興味を持った人たちの中には、その中でよく使われているオノマトペに関心を持つ人も多いようです。
3.「津々浦々 日本のセンパイ / Welcome to My Japan!」
日本の各地で働く外国人の先輩たちの仕事や生活、日本や日本語についての思い、後輩へのアドバイスなどを紹介するドキュメンタリー?コーナーです。海外で見ている人たちにとっては、日本の地方や文化の多様性を知ることもできます。
最後に、私が担当する「日本語教授法A」の授業で番組の第1回を見た学生の皆さんのコメントを少し見てみましょう。
● 今後、困っている外国人がいたら助けたいと思った
● 自分が持っている知識や能力を引き出すストラテジーという発想がいいなと思った
● 日本人にも、留学などでストラテジーが役に立つと思った
● この番組には、英語の字幕や英語のナレーションがあるので、英語学習にも役立ちそう
● 「津々浦々」に出ていたミャンマーの若者は10か月日本語を学習した後、来日して働いていると知って驚いた
また、この授業を履修している留学生のコメントには以下のようなものがありました。
● 外国人としてとても共感した。日本語で自立したコミュニケーションをするために自分の日本語能力を最大限に生かしてがんばりたい
この番組を見た学生の皆さんは、それぞれ自分自身に引き付けて考えることがあったようです。
この番組では、外国語としての日本語学習やその苦労、解決方法だけでなく、日本の各地で活躍している外国人とその周りの日本人の様子も伝えています。多文化共生社会を目指す日本と日本語の今が垣間見られる日本語学習番組、ぜひ見てみてください。
<参考サイト>